29.木村医科器械(株)
KSV-1a
1.特徴(図III-29-1)
 KSV-1は麻酔用に開発された人工呼吸器であるが、これを病棟仕様にしたのがKSV-1aである。呼気弁ユニットの交換だけでいづれの仕様にも変更できるので、おもに麻酔用に使用するが、緊急時には病棟でも使用したい場合に最適である。電気モーターによるベローズ駆動方式の病棟用、救急用、人工呼吸器であるが、AC電源のみ対応でバッテリー駆動はできない。
2.性能
 モード..........Control, Assist/Control
 一回換気量..100〜990 ml     
 流量...............4〜53 LPM      
 呼吸回数.......6〜40 BPM      
 バッテリー作動....不可 
 重量...............14 Kg         
 消費電力.......100V 50VA
 
3.機構の概略(図III-29-2)
 吸気時にはモーターの回転力がベルトやギアに伝達されてベローズを圧縮する。モーターの作動状況はエンコーダーで監視される。呼気時にはモーターが逆回転し、ベローズは元に戻る。酸素を添加する機構も設けられている。トリガー感度は半固定(-1pH2O)である。PEEPはオプション扱いである。
4.操作(図III-29-3)
 換気量、換気回数、I:E比、を設定する。消音キーを3秒以上押し続けると一回換気量設定ウィンドーがトリガー感度設定になり、トリガー感度設定を変更できる。
5.アラーム
 低圧(5, 10 pH2O)、高圧(40, 60 pH2O)、停電のアラームが設けられている。
6.メンテナンス
 作動点検は毎回を適時行う。患者回路、呼気弁、加湿器は最低、週に2回は交換、洗浄、滅菌する。
 
KV1+1
1.特徴(図III-29-4)
 酸素ガスの高圧を駆動源とする小型、軽量、多用途の人工呼吸器で、単2乾電池を内蔵するのでAC100vがなくても作動可能である。
2.性能
 モード..........Control, Assist/Control
 分時換気量.. 約4-10 LPM (目盛り1-11で設定するが、この数値は分時換気量と直接の相関はない。同じ数値でも酸素濃度の設定により分時換気量は変動する)    
 I:E比...............1:2固定      
 呼吸回数.......8-30 BPM      
 バッテリー作動....DC 6v, 6W(約18-24時間,100%では7-10時間) 
 重量...............3.1 Kg         
 消費電力.......100V 7VA
3.機構の概略(図III-29-5)
 吸気ガスは酸素ガスを電磁弁で断続して作る。このガスは流量調節弁で流量調節される(I:Eが1:2の固定なので、この流量の1/3が分時換気量になる)。このガスはジェットベンチュリー効果を利用して希釈されるので、酸素濃度の設定が低い方が駆動ガス量が増加する。増量してちょうど7 LPM前後の分時換気量になる程度なので、もし100%を選択すると希釈がなく、ガス流量の増加が見込めない。そのままでは分時換気量が不足するので、ガス量の不足を補う意味で100%用補助ソレノイドが設けられている。この場合、換気量の設定を変えても実際の換気量は7 LPMよりあまり増加しない。
4.操作(図III-29-6)
 換気量のダイアルと実際の分時換気量の相関は表のようになる。実用的には酸素濃度を40%、換気量の目盛りを2.2の固定で使用するか、この表(簡易取り扱いシートが付属している)を機器に付けておいてこれを見ながら設定する形になる。60-100%の設定を選択すると必要な分時換気量が得られない。100%を選択した場合(100%設定確認ランプが点灯する)だけ、バイパスソレノイドにより実用的な分時換気量が得られる点に注意が必要である。
 
  酸素濃度と分時換気量より必要な目盛りの数値(換気量)






 
酸素濃度分時換気量 10 11 12
  35%
  40%
  45%
  50%
  60%
  100%
1.0
1.3
1.7
2.0
2.5
 
1.2
1.7
2.0
2.5
3.5
 
1.5
2.0
2.2
3.0
4.5
 
1.8
2.2
2.8
3.5
6.0
1.0
2.0
2.5
3.0
4.0
11.0
2.0
2.2
2.8
3.5
5.0

4.0
2.5
3.0
4.0
8.0

9.0
2.7
3.5
5.0


 
3.0
4.0
6.0


 






 
5.アラーム
 12秒間、気道圧が5pH2O以上上昇しなければアラームが鳴る。
6.メンテナンス
 こういう機器は、救急室、CT室などで一時的な換気に用いられるケースが多いが、一般的に言えば、充分なメンテナンスがされていないことが多い。最低限として、呼気弁、患者回路を定期的に交換、洗浄、滅菌し、電池の消耗に注意する。
 
 
図III-29-1    KSV-1aの外観
図III-29-2    KSV-1aの構造
図III-29-3    KSV-1aの操作パネル
図III-29-4    KV-1+1の外観
図III-29-5    KV-1+1の構造
図III-29-6    KV-1+1の操作パネル