8.Hamilton Medical
AMADEUS
1.特徴(図III-8-1)
Veolaのコストダウン機としてAmadeusが開発されたが、後発の分だけAmadeusの方が回路構成技術や基本性能が改良されている。"Simple,Practical,Reliable"の宣伝コピーのとおり、奇をてらったところがなく、すなおなパッケージに高機能を組み込んでさりげなさが良い。つまみの配置、目盛りのデザインも人間工学的に優れ、操作面での違和感を意識させない。デジタル技術の熟成を感じさせる人工呼吸器である。
2.性能
1)利用できるモード
(s)CMV(=Control/Assist)
SIMV(+PSV)
SPONT(=PSV,CPAP)
---------------------------------
+PEEP
Apnea ventilation
2)基本データー
システム作動間隔時間...? ms
最大吸気ガス流量
強制換気............180 LPM
PSV.................180 LPM
吸気ガススルーレート...21.4 L/s2
最大強制換気数.........120 BPM
最大SIMV回数........... 60 BPM
3.制御回路、制御機構
1)制御機構の概説
外観のデザインは、一見、古典的な機構を連想させるが、中身は完全なデジタル機である。制御機構は"control,frontpanel,ai/oxygen mixer"の3つのサブシステムより成り、それぞれにマイクロプロセッサーを搭載する。吸気バルブや呼気バルブは電磁力でダイレクトドライブする高速アナログ機構が採用されている。
2)機械的機構の特徴
Y-ピースと患者との間に、両方向の流量を測定する差圧型のセンサーを設けるアイデアは古くより提唱されていたが、実用機として最初に市販された。ただし、このフロートランスデューサーはアラーム専用であり、機械制御は内臓のフロートランスデューサーで行うので、この部分のトラブルは人工呼吸器の作動にまったく影響しない。
3)ガス流量計測
a)吸気側
本体内部では吸気バルブの位置とバルブの前後圧より吸気ガス流量が計測される。この情報は、吸気バルブの制御や、PSVの吸気終了認識条件、MMVでのPSV圧の制御、等に使用される。
b)気管チューブとYチューブの間(図III-8-2)
内部ガス流量測定系以外に、外部フロートランスデューサーが、Yピースと患者回路との間に設置されている。これは両方向計測ができる差圧型のセンサーで、センサーには可動式のマイラー膜"mylar membrane"が、ガス流量に応じて開口面積を変わる。(=variable orfice) この両端の差圧を計測し、直線化処理する事で吸気・呼気の流量を高精度に計測できる。死腔は9mlで、湿度やネブライザーで投与される薬剤には殆ど影響されない。外部フロートランスデューサーの情報はモニター専用でアラームに使用されるが、機械制御には用いられない。したがって、外部のフロートランスデューサーの較正のズレ、故障は機械の作動に影響しない。
4)吸気バルブ(図III-8-3)
吸気サーボバルブは構造を図示した。音楽用のスピーカーの駆動部のように電磁力でプランジャー"plunger"を動かし、吸気ガス流量を20〜3000ml/秒の範囲で正確に制御する。このバルブの位置は位置センサー"positioner"により絶えず把握されている。流量情報によって、このサーボバルブの開き具合が補正される。なおサーボループ時間は0.1秒であり、どんなパターンにも0.1秒で反応する。バルブ自体の応答時間は40msである。
5)呼気バルブ(図III-8-4)
呼気弁も吸気バルブと同じように電磁力によって、広い表面積を持つシリコン膜をダイレクト駆動する構造をしている。PEEP/CPAP 圧も電磁力でつくられる。なお、ここには気道圧によるサーボ制御はない。
4.ニューマティック回路(図III-8-5)
O2/Air配管より入力されたガスは純電子的なブレンダーで酸素濃度調節される。これはO2と、Airの両側に設けられた電磁弁で開閉時間を調節することで、各流量を調節する。純電子的なブレンダーは機械式に比べて精度が高い事、経年変化が殆どない事、機械工作が簡単な事、回路抵抗が少ない事に利点がある。混合ガスは貯蔵タンク"reservoir tank"に貯められる。これはO2/Airの組成の安定化と駆動圧の安定化、ピーク流量の確保の三役をしている。混合ガスはサーボバルブ(フローコントロールバルブ)によって吸気ガスになる。すべての吸気ガスは吸気サーボバルブ系より創られる。つまりディマンドフローシステムも兼ねる。また、ここで吸気流量も演算する。吸気ガスは外部フロートランスデューサーでモニターされて、患者に供給される。呼気ガスは外部フロートランスデューサーで計測された後、ダイレクト駆動の呼気弁より大気に放出される。
5.制御ソフト
1)トリガー方式
本体内部の吸気側の圧トランスデューサーによって圧トリガーする。オプションの外部圧センサー(Proximal Airway Pressure)を装備した場合でも、トリガーは内部のセンサーで行われる。
2)(S)CMV
強制換気直後の0.2sはトリガーに反応しない。
3)SIMV
固定時間方式である。トリガーウィンドー時間はCMVサイクル時間と同じ長さが設けられる。SIMV回数を15回/分以下に設定した場合はCMVサイクル時間もトリガーウィンドー時間も4秒(=60秒/15)に固定されるが、15回/分以上の設定では(同じつまみで兼用しているので)CMVサイクル=SIMVサイクルになり、可変時間方式と同じになる。なお、SIMVでの強制換気に対しても0.2秒の不応期が設定されている。
4)PSV
吸気終了認識条件は吸気ピーク流量の25%値である。また、最大吸気時間は3秒までに制限している。
5)MMVの制御(図III-8-6)
MMV(Minimum Minute Ventilation)もオプションで装備可能である。なお、Haminton方式のMMVは、通常用いられるMMV(Mandatory Minute Volume ventilation)とは概念が異なる。(詳細は I.A.6.MMVを参照。)
6)バックアップ機能
15秒以上の無呼吸があれば無呼吸バックアップ"Apnea ventilation"に切り替わる。(裏パネルのスイッチの設定によっては"Apnea ventilation"をオフにできる。)原則的には、換気条件はパネルの設定どおりの回数、換気量、%サイクル時間で行われるが、そのままではSIMVモード選択時に、適切な回数でバックアップ換気ができないので、15回/分以下の設定では15回/分で、それ以上の値の時は、設定回数で為される。このように、一回換気量や呼吸数の設定は"Apnea ventilation"の設定でもあるので、たとえ"SPONT"モードで作動させる場合でも、これらの設定を必ず行う。"Apnea ventilation"より離脱したい時は、いづれかのモードキーを押せば希望のモードに切り替わる。呼吸回路がはずされたか否かを絶えずチェックする機構があり、気道吸引操作で"Apnea ventilation"に入いらないようになっているが、もし、これを確実に防ぎたければ、あらかじめ操作前にアラームサイレンスキーを押す。
7)SIGH
オプションで装備できる。100呼吸(強制換気もしくは自発呼吸)に対して2回、設定換気量の150%のボリュームで行われる。
8)データー出力
オプションのインターフェースカードを組み込めば、アナログ信号で気道内圧、フロー、ボリュームが出力可能。RS 232Cによるデジタル信号で換気量、呼吸数、アラーム状態を出力できる。
6.操作体系(図III-8-7)
1)一般的な設定
モードの設定以外はすべてパネル上のつまみでアナログの感覚で行える。特に%Insp,%Pause,%Expiratoryの設定やPEEP/CPAP,PSV圧の設定のつまみは同軸上に並んだつまみによって設定と表示が視覚的に行える。
2)自発呼吸モード
自発呼吸モードでもバックアップ換気条件として、適切な換気量、呼吸数を設定する。
3)Hamilton-MMVの設定
PSV圧は設定値に対して+0〜+30cmH2Oの範囲で(絶対値で50cmH2Oまでの範囲で)自動調節されるが、設定圧より低くなることはない。だいたい一呼吸につき1〜2cmH2O動く。途中でPSVのつまみを動かした場合は、仮にその時に設定圧+αで作動していたのであれば、新しい作動圧は新しい設定値+αの圧で行われる。
7.モニター、アラーム機能
1)患者状態
@過剰呼吸回数(10〜130回/分)
A最高気道内圧(10〜110cmH2O)
B低分時換気量(0.2〜50LPM)
C高分時換気量(0.2〜50LPM)
D酸素濃度(18〜103%)
E無呼吸(15秒)
2)その他
@設定不適切"user setting inapropriate"
A回路はずれ(2呼吸)
Bセンサー逆向き"turn flow sensor"
Cエアー、酸素配管 (2bar=29psi)
D電源
E機器作動不能
8.ディスプレー機能
気道内圧は発光ダイオードのバーグラフで表示される。患者情報は(Exp.Min.Vol, Ext.Tidal Vol, PEEP, Insp.Peak Flow, Rate, Oxygen, Res, Comp)のうちから1つだけ切り替えて数字で表示できる。つまみごとに設定値を数値表示するディスプレーはないが、対数圧縮された見やすい目盛りで読み取れる。
9.患者回路構成、加湿器(図III-8-8)
加湿器はF&P が標準装備される。
10.日常のメンテナンス
1)呼吸回路
標準の呼吸回路や呼気弁はEOG、オートクレイブ、消毒液で滅菌する。バクテリアフィルターはディスポが望ましく、24時間で交換。
2)外部フロートランスデューサーは24時間で交換して、洗浄、滅菌する。特にフロートランスデューサーは消耗品である。この部品はEOGや消毒液でのみ滅菌可能で、一応、較正できなくなるまで再使用可能である。
3)呼気弁
シリコン膜は外部フロートランスデューサーより寿命は長いが、少なくとも30回の滅菌をしたら廃棄する。
11.定期点検
1)1日1回、使用前
初めてに患者に装着する前や、酸素センサーやフロートランスデューサーを交換した時。それ以外に少なくとも一日に一回、下記の較正をする。この時は、患者より人工呼吸器をはずす必要がある。
@酸素センサー較正
Aフローセンサー較正
B空気漏れテスト
2)3ヶ月ごと
ガス入力フィルター、リアーパネルファンを点検。電気系のマイクロリークのテスト。全機能テスト。人工呼吸器の圧較正。
3)6ヶ月ごと
酸素濃度センサーを交換。
4)12 ヶ月ごと
指定サービス技術者による点検を受ける。詳細はマニュアルを参照する事。
12.欠点
1)フローセンサーに耐久性がいない事。また、キャリブレーションフリーでない事。
VEOLA
1.特徴(図III-8-9)
VEOLAはAMADEUSの上位機種である。標準装備としてHamilton方式のMMVを内蔵し、ディスプレー機能や、凝ったバックアップ機能も装備している。
2.AMADEUSとの相違点
1)MIXER(図III-8-10)
O2/Airのブレンダーはメカニカル方式である。このブレンダーは従来のダイアフラム式に比べてほとんどキャリブレーションも必要とせず、長期間にわたり精度が安定している。
2)フローセンサー
どういう訳か外部フローセンサーのチューブ接続の向きがAMADEUSとは逆になっている。
3)MMV
基本的にはAMADEUSと同じ作動をするが、バックアップ機能への移行のしかたが異なる。PSV圧を自動調節していく方式のMMVはトリガーがなければ、換気補助がおこなわれない。この対策に"Step by Step Procedure"と名付けられたバックアップ機構が存在する。もし自発呼吸が止まって、呼気ガスが15秒間検出されない時や、呼気の分時換気量の実測値が設定値より1LPMを下まわればすぐにSIMV方式のバックアップ換気に入いる。ただし、自発呼吸が再び現れても、自動解除されない。なお、AMADEUSでは無呼吸だけでバックアップに入り、換気方式は(S)CMVである。
4)SIMV
トリガーウィンドー時間は固定時間方式で、CMVサイクル時間に等しく60秒/CMV回数で計算される値になる。
5)バックアップ機能
H-MMVならびに自発呼吸モード(Spontaneous)、SIMVで有効。呼気での分時換気量が設定値より1LPM以上少ない場合、無呼吸が15秒以上持続した場合、バックアップ機能が作動する。(背面パネルのスイッチによりOFFにもできる。)パネルで設定された条件(回数、換気量、%サイクル時間)が用いられる。MMVやSpontaneousではSIMVに切り替わる。SIMVではCMVに変わる。Spontaneous or MMV→SIMV→(S)CMV このように順を経てモードが切り替わるので"Step by Step Procedure"と呼ばれている。
3.基本性能
設定できる最大CMV回数、SIMV回数はAMADEUSの方が多い。
4.ニューマティック回路(図III-8-11)
使われているパーツは若干異なるが、制御機構やガスの流れはAmadeus と類似している。
GALILEO
1.特徴(図III-8-20)
Hamilton社の最新モデルであるGalileoは、最新のコンピューター技術を駆使して製作されたハイテク機器である。Hamilton社はスイスの企業で、これはM/Aの繰り返しにより疲弊したアメリカの企業とは対照的である。競合するライバル製品をよく研究し、その上に独自の技術を盛り込んでいるのが独創的である。それはHamilton-MMVを発展させたASVとAutoFlow類似のAPVという新しい換気モードに凝縮されている。なお、AmadeusとVeolaは東機貿が扱っていたが、Galileoはスタープロダクトが代理店で、現時点ではサービスエリアは関東圏に限定される。
2.性能
1)利用できるモード
CMV(A/C)
SIMV(+PSV)
SPONT(=PSV,CPAP)
ASV
P-CMV(=PCV), P-CMV+APV
P-SIMV(=PC-SIMV), P-SIMV+APV
---------------------------------
+PEEP
Apnea Backup
2)基本データー
システム作動間隔時間...? ms
最大吸気ガス流量
強制換気............180 LPM
PSV.....................180 LPM
吸気ガススルーレート...? L/s2
最大強制換気数.........120 BPM
最大SIMV回数........... 60 BPM
3.制御回路、制御機構
1)制御機構の概説(図III-8-21)
メインのCPUにはintel486/DX2 66MHzが使われている。電気系統の概略は図のとおり。
2)機械的機構の特徴
基本的な構造はAmadeusとほとんど同じである。相違点は液晶タッチパネルによるグラフィカルな操作パネルが採用されている点である。
3)ガス流量計測
a)吸気側
本体内部では吸気バルブの位置とバルブの前後圧より吸気ガス流量が計測される。この情報は、吸気バルブの制御や、PSVの吸気終了認識条件、ASVでの圧の制御、などに利用される。
b)気管チューブとYチューブの間
Y-ピースと患者との間に、両方向の流量を測定する差圧型のセンサーにより2-15lpmの感度のフロートリガーと換気量モニターを行っている。
4)吸気バルブ
Amadeusとほぼ同じ。
5)呼気バルブ(図III-8-4)
Amadeusとほぼ同じ。
4.ニューマティック回路(図III-8-22)
Amadeusとほぼ同じ。
5.制御ソフト
1)トリガー方式
フロートリガー(感度2-15LPM)を選択すると、圧トリガーは停止し、自動的にベースフローが付加される。ベースフローはトリガー感度の2倍値になる。ベースフローは呼気開始初期には適応されず、呼気ガス流量がトリガー感度の4倍値以下になった際に開始される。その場合にも一気に開始するのではなく、徐々に設定値まで上昇する。圧トリガー方式を選択するとベースフローは付加されない。
2)A/C, sCMV
強制換気直後の0.2sはトリガーに反応しない。吸気波形はSine, Square, Dec., 50% Dec.の4つより選択できる。
3)SIMV(図III-8-23)
SIMVサイクル時間が4秒までは全時間方式である。それ以上の場合には、トリガーウィンドー時間が4秒の部分時間方式になる。
4)PSV
PSVはSPONT, SIMV, P-SIMV, P-SIMV+APVモードで利用できる。吸気終了認識条件は吸気ピーク流量の10-40%値を選択できる。これはETS(Expiratory Time Sensitivity)で設定できる。最大吸気時間は3秒までに制限される。
5)ASVの制御(図III-8-24)
ASVは簡単に表現すれば、Hamilton方式のMMV(Siemens社で言うところのVolume Supportと類似)に、理想値の呼吸数と実測値の呼吸数との差の回数のSIMVをAutoFlow(Drager社)方式で与えて、自発呼吸が存在しない状態から確実にトリガーしている場合まで、換気能力がどのように変動しても、「機械が自ら吸気仕事量が最少になる理想的な換気条件に自動的に選択していく」全自動の換気モードである。広義的に解釈すれば、高次元の処理をするMMVの一形態で、最少の換気圧で、目標分時換気量が一定値以上になるように、また設定値以上の分時換気量を患者に許容できる、モードである。ASVの設定において重要なパラメーターは、体重(Body Weight)と%分時換気量(% Minute Volume)と最高気道内圧(Pmax)である。
ASVでは最初に、目標分時換気量(target rate)と目標換気回数(target volume)を決定している。目標分時換気量は体重(ideal body weight)より計算できる。この値に対する%値が%分時換気量となる。目標換気回数はOtisの式: A.B. Otis, W. O. Fenn, and H. Rahn, "Mechanics of breathing in man", J Appl Physiol, vol. 2,pp. 592-607, 1950に基づいて計算される。この式によりWOBを最少にする理論的な換気回数(target rate, f target)を目標値として演算している。
Otisの式
RCe: respiratory time constant (= expiratory tidal volume / expiratory peak flow)
MV: minute ventilation
f: total respiratory rate
VD: dead space
目標分時換気量を目標換気回数(f target)で割れば、目標1回換気量になる。Otisの式におけるRCeなどの未確定項目を測定するために、P-SIMVによるテスト換気を5回繰り返す。1回ごとにRCe, Vt, fを測定し、これらの値で次の換気に臨む。もし、これらのパラメーターが下記条件を逸脱した場合は、強制的に仮定値を入力して次の換気を行う。例えばRCeが規定値より逸脱した場合は1(weights>10kg)もしくは0.5(その以外の場合)を用いる等の処理を行う。
[条件]
VDは2.2ml/kg body weightより計算する。
100%MVは0.1L/min/kg(adult), 0.2L/min/kg(infants)である。
Vtは2*VD〜10*VDみら範囲内で決定する。
fは5〜60bpmの範囲内で、Te>3*RCexpを満たす値を採用する。
I:E比は1:1〜1:4の範囲に限定する。
Teは3*RCeである。 0
Tiは60/f target - Teになる。
RCeは0.1-2の範囲に限定する。
V/P比は5〜120の範囲に限定する。
6)APV
APVはAdaptive Pressure Ventilationの略でPRVC(Siemens社)やAutoflow(Drager社)と類似の概念である。PCV圧を目標1回換気量を達成するように肺のコンプライアンスに応じて1呼吸毎に最少の換気圧を選択する機能で、P-CMVとP-SIMVに付加できる。換気圧は5cmH2O+PEEP〜Pcontrolの範囲内で自動的に決定される。最大吸気圧は気道圧上限アラーム-10cmH2Oである。
7)P-CMV, P-CMV+APV
P-CMVは、一般的にPCVと表現されているモードと同じである。APVを付加するとServo-300のPRVCやEvita-4のIPPV(AutoFlow)と同じになる。
8)P-SIMV, P-SIMV+APV
P-SIMVはPC-SIMVやSIMV(Pressure Control)と表現されるモードと同じで、PCVによるSIMVを行なうモードである。P-SIMV+APVはSIMV(AutoFlow)と同じモードで、強制換気は(1回換気量が設定値になるように自動的にPCV圧が調節される)PCVで与えられる。PSV圧は設定値のままで変化しない。
9)無呼吸バックアップApnea Backup
設定時間以上の無呼吸を認めれば無呼吸バックアップに切り替わる。その際にはA/Cの設定条件で換気が行われる。自発呼吸を検出すると自動的に元のモードに復帰する。気道吸引操作などで、無呼吸バックアップに入いらないようにしたければ、吸引操作前にあらかじめアラーム消音キーを押しておけばこれを回避できる。モード変更後や校正後の30秒間は無呼吸バックアップは無効になっている。
10)ネブライザー
ONにすると30分間作動し自動的に停止する。ただし、吸気ガス流量にネブライザー流量が加算されて送られる。
11)SIGH
量換気モードの際には100呼吸(強制換気もしくは自発呼吸)に対して設定換気量の150%のボリュームで、圧換気モードでは+5cmH2Oの圧で強制換気が行われる。
12)SPONT
SPONTモードは自発呼吸モードで、CPAPもしくはPSVを選択できる。
6.操作体系(図III-8-25)
1)一般的な設定
タッチパネルとC-knob、M-knobの2つのつまみによりすべての操作を行う。C-knobはモードや換気条件の設定に、M-knobはモニター表示の設定に使用する。タッチパネルの操作によりウィンドー形式のメニューが次々に表示されるので、必要な項目をタッチして選択し、必要なら数値を入力し、最後にCLOSEキーを押して確定する。
画面左上には3つのアイコンが用意されていて、これらを操作することでモニター関係のメニューを設定できる。画面右上にもアイコンが用意されていて、これらを操作することで各種設定を行うことができる。
7.モニター、アラーム機能
1)患者状態
@呼吸回数(0〜130回/分)
A最高気道内圧(0〜110cmH2O)
B分時換気量(0〜50LPM)
C無呼吸(15〜60秒)
2)その他
@設定確認
A回路はずれ(2呼吸)
Bフローセンサー
Cエアー、酸素配管
D電源
E機器作動不能
F酸素濃度(18〜103%)
GPEEP圧低下
8.ディスプレー機能(図III-8-26)
気道内圧、フロー、ボリュームは同時に3波形グラフィックで表示できる。さらに、F-V曲線、P-V曲線、呼吸仕事量、PTP、気道抵抗、コンプライアンス、RSB、P01、AutoPEEP、などを表示できる。
9.患者回路構成、加湿器
加湿器はF&P が標準装備である。
10.日常のメンテナンス
1)呼吸回路
標準の呼吸回路や呼気弁は48時間で交換し、EOG、オートクレイブ、消毒液で滅菌する。バクテリアフィルターはディスポが望ましい。
2)外部フロートランスデューサーは48時間で交換し、洗浄、滅菌する。特にフロートランスデューサーは消耗品である。この部品はEOGや消毒液でのみ滅菌可能で、62℃以上に加温してはならない。一応、校正できなくなるまで再使用可能である。
3)呼気弁
シリコン膜は外部フロートランスデューサーより寿命は長いが、少なくとも10回の滅菌をしたら廃棄する。
11.定期点検
1)1日1回、使用前
初めてに患者に装着する前や、酸素センサーやフロートランスデューサーを交換した時。それ以外に少なくとも一日に一回、下記の校正をする。この時は、患者より人工呼吸器をはずす必要がある。
2)3ヶ月ごと
ガス入力フィルター、リアーパネルファンを点検。電気系のマイクロリークのテスト。全機能テスト。人工呼吸器の圧校正。
3)12 ヶ月ごと
指定サービス技術者による点検を受ける。詳細はマニュアルを参照する事。
12.欠点
1)フローセンサーの校正は患者に装着したままではできない。
2)適応できる最低体重は3Kgであるが、フロートリガーの最高感度は2LPMなので、新生児にPTVするには感度不足である。
図III-8-1 AMADEUSの外観
図III-8-2 フローセンサー
図III-8-3 吸気バルブ
図III-8-4 呼気バルブ
図III-8-5 AMADEUSのニューマティック回路
図III-8-6 MMVの作動
H-MMVでは分時換気量が設定値になるようにPSV圧が自動調節される。グラフの始めは設定値10 LPMに向かってPSVレベルが自動調節される過程を示している。グラフ中央では、設定値が8 LPMに変更されている。その後は新しい設定値を保つようにPSVレベルが自動調節される過程を示している。
図III-8-7 AMADEUSの操作パネル
図III-8-8 AMADEUSの患者回路
図III-8-9 VEOLAの外観
図III-8-10 VEOLAのミキサー
図III-8-11 VEOLAのニューマティック回路
図III-8-20 Galileoの外観写真
図III-8-21 Galileoの制御系
図III-8-22 Galileoのニューマティック回路
図III-8-23 GalileoのSIMV論理
図III-8-24 GalileoのASV論理
図III-8-25 Galileoの操作画面
図III-8-26 Galileoのディスプレー画面
図III-8-27 Galileoの